協会について

ご挨拶

日本ヴィラ=ロボス協会が発足したのは1987年(ヴィラ=ロボス生誕100周年)のこと。協会会報誌である『ショーロス』第1号に、初代会長・村方千之氏はこのように執筆しています。

「ヴィラ=ロボスが本当の意味でこの日本で理解され、知られるにはまだ時間がかかるだろう。しかし必ずその時期がくるものと信じている。そのために協会は大きな役割を果たさなければいけない。」

そのあとの村方千之氏は、2014年に逝去される直前まで、ヴィラ=ロボスの音楽を日本に広げるために、協会の方々と共にあらゆる活動をされ、ブラジル政府からリオ・ブランコ勲章を受勲されるに至りました。ヴィラ=ロボスについての論考を執筆し、ヴィラ=ロボスの音楽だけでプログラムされたコンサートを企画し、東京交響楽団との演奏会においてもブラームスの交響曲第1番と共にヴィラ=ロボスの交響詩<<ウイラプルー>>を取り上げ、ブラジルに渡っては現地のオーケストラと何度もコンサートを指揮され……。村方会長から協会を引き継がせて頂くにあたって、村方会長の成された仕事の数々を整理するだけでその幅広い活動に目眩がするような思いが致しました。

その後、2017年に協会の再興を果たすことができ、駐日ブラジル大使館様からも強い協力関係を得る幸せに恵まれて今に至ります。冒頭でご紹介致しました『ショーロス』第1号の発刊から30年あまりが経過した今、ヴィラ=ロボスについての理解や演奏の機会は格段に増えたと言えるでしょう。2016年の第33回日本管打楽器コンクールのファゴット部門の課題曲に<<七つの音のシランダ>>が指定されるなど、日本におけるヴィラ=ロボス受容は、明らかな進展を見せていますし、<<ブラジル風バッハ>>や、<<ショーロス>>などのギター曲、小編成の室内楽曲など、日本各地でプロ・アマを問わず演奏されている曲も数多くあると思います。

では現代において、日本ヴィラ=ロボス協会は何を果たし得るでしょうか。私は、以下の三点を協会の活動の主軸にしたいと考えています。

第一に、ヴィラ=ロボスの音楽を愛する人たちが集うコミュニティを形成すること。駐日ブラジル大使館やリオのブラジル音楽アカデミーと連携を取りながら、これを進めて参ります。

第二に、初代会長・村方千之氏がブラジルと日本を往復して残された膨大な資料や自筆譜の数々、および過去の会報誌『ショーロス』などのデジタルアーカイヴ化を行い、後世にきちんと残していくこと。そのうえで、プロ・アマを問わず、ヴィラ=ロボスに関する資料や楽譜についてのお問い合わせをサポートできるような組織を作っていきたいと考えています。

第三に、演奏家と研究者が手を取り合ってヴィラ=ロボスについての包括的な理解を進め、日本におけるヴィラ=ロボス作品の演奏と研究に新しい知見をもたらす場となること。ヴィラ=ロボス研究にあたっての基本文献の多くは、いまだ日本語訳が出版されていない状況であり、これは早急に解決する必要があると考えます。(2022年9月を目処に、日本語で書かれた初のヴィラ=ロボス伝記を出版予定です)演奏機会が格段に増えた今こそ、この偉大なる作曲家の作品をめぐる研究は勿論のことながら、作曲家自体についても、より広範な文脈のなかで捉え直すことが必要になってくるでしょう。そしていずれは、こうした演奏家と研究者の交流の成果発表の場として、シンポジウムとコンサートから成る催しを不定期に開きたいと思っています。

ヴィラ=ロボスの音楽を愛し、このウェブサイトを訪れて下さる方なら、きっと同意してくださると思うのですが、ヴィラ=ロボスの音楽には何ともいえない懐かしさと大らかさがあります。そして一度耳にすると頭から離れなくなるような魅力に満ちています。私も、その魅力にすっかりやられてしまい、音楽の道を志した一人であります。演奏家としてこの魅力をより深めると共に、多くの方に共感して頂けるように協会の一人として邁進致しますので、みなさまどうぞよろしくお願い致します。

日本ヴィラ=ロボス協会会長・指揮者
木許裕介


初代会長・指揮 村方千之

初代会長・指揮 村方千之

1925年生まれ。1955年東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。在学中より指揮法を金子登、渡邊暁雄に、卒業後は斎藤秀雄に師事。70年より東京音楽大学講師。75年、リオ・デ・ジャネイロでの第1回ヴィラ=ロボス国際指揮者コンクールに於いて特別賞を受賞、帰国後、受賞記念演奏会で東フィルや東京交響楽団を指揮。邦人作品をブラジルに紹介することをはじめ、82年にはヴィラ=ロボス国際コンクールの審査員として招かれるなど、日本とブラジルの音楽文化交流に尽力。

国内に於いてはヴィラ=ロボスの作品演奏会を幾度も企画・指揮・初演し、ヴィラ=ロボス作品の普及と紹介に多大な成果を上げた。さらにブラジルに招かれてブラジリア、リオ・デ・ジャネイロ、サンパウロなどで現地交響楽団を指揮、文化大臣セルソ・フルタード氏とも会見するなど、両国の音楽文化交流と国際親善に務めた。その功績により、88年、ブラジル政府から「リオ・ブランコ勲章」を受勲。また、50年にわたり指揮法教室を主催し、2014年に心不全のため他界するまで後進の育成に力を注ぎ続けた。日本ヴィラ=ロボス協会初代会長、日本指揮者協会および日本演奏連盟会員、東京都中学校吹奏楽連盟初代理事長。


第二代会長・指揮 木許裕介

第二代会長・指揮 木許裕介

故・村方千之氏に指揮法を師事したのち、イタリアを中心に欧州で研鑽を積む。2018年、ポルトガルで開催されたBMW国際指揮コンクール(The BMW IV International Conducting Masterclass and Competition)にて第1位優勝。同コンクール優勝は日本人として初となる。同年、大阪府高槻市より「特別功労賞」受賞。2019年にはモロッコのカサブランカ国際音楽祭より招聘され指揮。2020年以降はフランスをはじめ欧州各地の音楽祭からも多数招聘されるなど、世界的な活動を展開している。

また、東京大学在学時より、ほぼ毎年「ブラジル風バッハ」をはじめとするヴィラ=ロボスの作品の演奏やプロデュースを実践。2016年には駐日ブラジル大使館の後援およびアンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル大使の御列席を得て、東京文化会館にて、東京交響楽団フォアシュピーラーの黄原亮司氏らとヴィラ=ロボスをメインとしたリサイタルを企画・指揮。ヴィラ=ロボスのパリ遊学時代に着目した斬新なプログラムと演奏で好評を博す。2017年には駐日ブラジル大使館で『ヴィラ=ロボス生誕130周年記念展覧会』を主催。本展覧会のトータル・ディレクション、および2万字にわたるパネル原稿執筆を行う。2018年以降は『ヴィラ=ロボスゼミナール』を提唱し、駐日ブラジル大使館にて連続的に開催。

2022年には駐日ブラジル大使館と協働で「ブラジル独立200周年記念コンサート」を開催、満席のスタンディングオベーションに浴す。2022年秋にはブラジルに渡りヴィラ=ロボス博物館でヴィラ=ロボス研究に従事すると共に、リオデジャネイロの第60回ヴィラ=ロボスフェスティヴァルに参加。この成果として、2023年3月には我が国初の書き下ろし評伝『ヴィラ=ロボス ブラジルの大地に歌わせるために』(春秋社)を出版し、オタヴィオ・コルテス駐日ブラジル大使より「日本におけるブラジルのクラシック音楽の普及にとって記念碑的な作品」と絶賛されたと共に、国内主要新聞およびメディアの書評欄に取り上げられた。2023年9月には群馬県大泉のブラジル人コミュニティで演奏し一夜で3度にわたるスタンディングオベーションを巻き起こし、「ブラジル人魂を持ったマエストロ」と評される。演奏のみならず、ブラジル・クラシック音楽に関する論考執筆や翻訳にも取り組んでおり、ブラジル外務省が主導するプロジェクト「Brasil em Concerto」の日本語盤CD解説をほぼ全てにわたって手がけ、これまでにCD解説だけで20万字に及ぶ執筆活動を展開している。

国内外の様々なオーケストラで指揮を執るほか、学術と芸術の架橋役として、東京芸術劇場ウインド・オーケストラ・アカデミーキュレーター、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、東京大学教養学部「学藝饗宴」ゼミナール芸術監督などを歴任。現在、エル・システマジャパン音楽監督や福井大学フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者などを務める。東京大学教養学部および東京大学大学院修了、修士(学術)。共著書に『二十歳の君へ』(文藝春秋社)『エル・システマ 音楽が与えてくれるもの』(エトヴァス・ノイエス新書)など。


2020年度-2021年度活動報告

新型コロナウイルスの影響を受け、当協会も、以前のように集まり・奏で・学ぶような活動の一時停止を余儀なくされました。オンラインで何かイベントを企画するということも考えましたが、やはり音楽の楽しみは「リアル」にあるのであって、中途半端なオンライン・イベントを行うぐらいならむしろ練りに練った文章でヴィラ=ロボス協会の活動や最新の研究をお届けしたい、という思いから、この期間は過去の研究の集積に専念いたしました。(なお、暫定的にこの期間の会員会費は無料とさせて頂きました。)

結果としまして、ブラジル外務省が主導するプロジェクト「Brasil em Concerto」の日本盤解説(ナクソス・ジャパン)をほぼ全てにわたって担当することとなり、現在までに4枚のCDに論考を寄稿することになりました。

・2021年3月:「ヴィラ=ロボス交響曲全集」(ヴィラ=ロボスの交響曲全解説としては日本初。レコード芸術3月号特選版)

・2021年5月:「ヴィラ=ロボス合唱編曲集」

・2021年7月:「ヴィラ=ロボス ヴァイオリン・ソナタ全集」

・2022年3月:「クラウジオ・サントロ 交響曲第5番&第7番「ブラジリア」」

また、演奏活動としては、当協会会長の木許裕介指揮/東京ニューシティ管弦楽団により、2021年9月に「ブラジル風バッハ9番」が演奏されました。「いま、夜が明ける!」と題した紀尾井ホールでの本演奏会は、駐日ブラジル大使館から推薦のレターを頂戴し、全席満席となるなど、大変な好評を頂きました。

最後に、これまでの活動の集積として、ブラジル独立200周年となる2022年9月を目標に、日本語で書かれた初のヴィラ=ロボス評伝(木許裕介著/日本ヴィラ=ロボス協会協力/春秋社)を出版することが決定いたしました。2022年もなかなか思うような活動が難しい状況ではありますが、まずはこの評伝の出版に全力を注いで参ります。


2019年度-2021年度役員

名誉会長 アンドレ・アランニャ・コヘーア・ド・ラーゴ(前・駐日ブラジル連邦共和国特命全権大使)

会長・理事長 木許裕介(指揮者)

副会長・副理事長 清水安紀(ピアニスト)

監事 杉田朋希


2018年度活動報告および2019年度活動予定

第二期となる2018年度は、2017年に主催した「ヴィラ=ロボス生誕130周年記念展覧会」において収集したヴィラ=ロボス関係資料をもとに、ヴィラ=ロボスの生涯や作品についての整理を行いました。また、駐日ブラジル大使館との連携を深め、ブラジル大使館において『ヴィラ=ロボスゼミナール -ヴィラ=ロボスの横顔-』と題した、多様な観点からヴィラ=ロボスを描き出すことを目的としたゼミナールを三回にわたり開催いたしました。さらに、ブラジル本国とNaxos Japanのコラボレーションによる「THE MUSIC OF BRAZIL」のカウンターパートナーとして日本ヴィラ=ロボス協会が指名を受け、同イベントのローンチ・レセプションにて弊協会のピアニスト清水安紀が演奏致しました。

2019年度には、こうしたイベントをさらに加速させて参ります。すでに駐日ブラジル大使館より「クラウディオ・サントーロ生誕100周年 没後30周年コンサート」(11月予定)のプロデュースを委嘱されており、調整を進めております。また、これと並行して協会の体制を若干変更いたします。会員の方々がより協会の活動に参画できるよう、「資料部」「広報部」「イベント部」「コンプライアンス部」の4つを設け、希望される会員の方々には各種の部に加入頂き、共にヴィラ=ロボスについての研究や情報の整理を深めることができるような体制を作る所存です。

これらを通じて、ヴィラ=ロボスについての論考や研究を進め、日本におけるヴィラ=ロボス受容に引き続き貢献して参ります。すでに複数の出版社および団体より、ヴィラ=ロボスの生涯および作品についての原稿執筆のオファーを頂いており、近年中にそのうちの幾つかの成果を公開できることと思います。

最後になりますが、協会のさらなる活動のためには、協会を応援して下さる会員の方々、スポンサーの方々のお力が必要不可欠であります。弊協会のサポートを頂ける方を広く募っておりますので、ご関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひともお力をお貸し頂ければ幸いです。


2017年度活動実績

本年度は、村方千之初代会長の逝去以来、休止状態にあった日本ヴィラ=ロボス協会を下記の役員と共に再建し、外に開かれた協会として相応しい組織を構築することに尽力しました。協会の活動に賛同を頂き、12名の新規会員の方々からご入会を頂くこととなりました。

また、協会主催イベントとして、「ヴィラ=ロボス生誕130周年記念展覧会」を駐日ブラジル大使館で開催することを実現し、この成功から、駐日ブラジル大使および文化担当書記官に名誉会長・名誉会員としてご加入頂くこととなりました。

駐日ブラジル大使館との連携の強化から、来年度以降に当協会主催で、駐日ブラジル大使館において「ヴィラ=ロボスゼミナール」を開催することを検討しています。

・協会の運営体制、定款の刷新
・協会会員として、12名の新規加入を得る。
・ヴィラ=ロボスに関する楽譜のお問い合わせに対応
・ヴィラ=ロボスを取り上げるコンサートに対して、2件の後援を認定。
・名誉会員に、ブラジルの著名な現代音楽作曲家エジノ・クリーゲル氏ご加入
・「ヴィラ=ロボス生誕130周年記念展覧会」を駐日ブラジル大使館で開催
・名誉会員に、パウロ駐日ブラジル大使館一等書記官(文化担当)ご加入
・名誉会長に、ラーゴ駐日ブラジル特命全権大使ご加入

2017年度役員

会長・理事長 木許裕介(指揮者)

副会長・副理事長 市村由布子(ヴィラ=ロボス研究家)

理事 清水安紀(ピアニスト)

理事 清水由香(ピアニスト)

監事 杉田朋希