ヴィラ=ロボス研究・関連書籍

ヴィラ=ロボスに関する論文や関連書籍を纏めています。基本的に、木許裕介著『ヴィラ=ロボス ブラジルの大地に歌わせるために』(春秋社)巻末の参考文献リストをベースとしたものですが、随時最新のものに更新して参ります。弊協会会員に限り、資料の所在についての詳しい情報や入手方法などのお問い合わせにも対応しております。

作成:木許裕介/最終更新:2023年4月5日

<ヴィラ=ロボス博物館およびヴィラ=ロボスシンポジウムに関する資料>

Museu Villa-Lobos. 1989. Villa-Lobos: sua obra. 3 ed. Museu Villa-Lobos.
Museu Villa-Lobos. 2021, Villa-Lobos : sua obra. 4 ed.  Museu Villa-Lobos.
→ヴィラ=ロボス博物館が作成した、この作曲家の公式カタログといってもよいものである。作品リストとして最も網羅的であり信頼に足る。1989年に第三版が出版されて以来、約30年ぶりとなるアップデートが成された最新版が2021年(Covid-19の影響もあり、実際に入手可能となったのは2022年だったようである)に発刊された。『ヴィラ=ロボス ブラジルの大地に歌わせるために』(春秋社)曲名の表記や作曲年代、初演者などの情報はいずれもこのカタログに準じており、本ウェブサイト上での表記も随時これにあわせて変更していく。ヴィラ=ロボスを研究するうえで必携の一冊。

Museu Villa-Lobos, coleção de fotografias.(https://museuvillalobos.acervos.museus.gov.br/acervo/ )
→ヴィラ=ロボス博物館によって電子化されたヴィラ=ロボスの写真を閲覧出来るサイト。

Museu Villa-Lobos.2012. Presença de  Villa-Lobos: 14 Volume ー100 anos de Arminda. Museu Villa-Lobos.

→1965年の第1巻以来発刊されてきたシリーズの最終巻。第1巻から第14巻まで、この作曲家を知る上では必読である。11巻に掲載されている、ヴィラ=ロボス博物館学芸員のPedro Belchior と Anderson Antunesによる、アルミンダとヴィラ=ロボス博物館の関わりについての記事(Presença de Arminda: Processos de Construção Da Memória No Museu Villa-Lobos (1956-1985). )9巻に掲載されている、作曲家エジノ・クリーゲルが寄稿した《ギア・プラチコ》についての短くも鋭い考察など、充実した内容のものが多い。これらはいずれも、ヴィラ=ロボス博物館のオンラインサイトからダウンロードすることが可能である。https://museuvillalobos.museus.gov.br/index.php/ultimas-noticias/144-mvl-disponibiliza-para-download-os-14-livros-da-serie-presenca-de-villa-lobos

Salles, Paulo de Tarso.(org)  Anais Simpósio Villa-Lobos.
→2009年に第一回シンポジウムが開かれて以降、2022年に第7回目を迎えたヴィラ=ロボスシンポジウムの紀要。いずれもPDFにて入手可能であり、ヴィラ=ロボス研究の最新の動向を知るうえで必読。これらの紀要に収録されている論文は下記に改めて記載することを控えた。なお、2023年3月時点では、日本人として唯一、柴田大介氏がこのシンポジウム第5回において発表を行っている。(Daisuke Shibata(2019), A Comparative Study of  Bachianas Brasileiras.)ここで氏が論ずるように、ヴィラ=ロボスの作品の出版譜には間違いが数多く見られるため自筆譜との対照が欠かせない。ヴィラ=ロボスの作品の音楽学的検証はまだまだ始まったばかりである。

<ブラジル音楽総論>

Instituto Piano Brasileiro ウェブサイト
http://institutopianobrasileiro.com.br/

→ Linha do Tempoにおいて、1767 年から2022年に至るまでの、ブラジルにおける重要なコンサート(ピアノが関わるもの)が纏められている。ヴィラ=ロボスの作品の演奏記録や、彼が指揮したピアノ協奏曲を知る上でも活用した。また、ニニーニャおよびミヨーのコンサート記録や、1920年前後のルービンシュタインのコンサート記録を確認するうえでも極めて有用である。

中原仁(2022)『ブラジリアン・ミュージック』アルテスパブリッシング。
→「ブラジル独立200周年」を機に発刊された一冊。200曲のブラジル音楽の紹介を通じて、楽曲自体のみならず、時代の変遷を描き出した貴重な書である。

Pessanha, Ricardo and McGowan,Chris. 1998.  The Brazilian Sound: Samba, Bossa Nova, and the Popular Music of Brazil (ヒカルド・ペサーニャ、クリス・マッガワン『ブラジリアン・サウンド―サンバ、ボサノヴァ、MPB ブラジル音楽のすべて』武者小路実昭、雨海弘美訳、シンコーミュージック・エンタテイメント、2000年。)
→ブラジル音楽の総体を描いた書として必読。「ショーロ」や「モジーニャ」などの解説も充実している。

Faour, Rodrigo. 2021. História da música popular brasileira Sem preconceitos (Vol.1): Dos primórdios, em 1500, aos explosivos anos 1970, Record; 3ª edição

Faour, Rodrigo. 2022. História da música popular brasileira: Sem preconceitos (Vol. 2): De fins dos explosivos anos 1970 ao início dos anos 2020,Record; 1ª edição
→ブラジルのポピュラー音楽史を知るうえで最新かつ最もよく纏まった著作である。

ブラジル連邦共和国外務省文化部(2008)『Texts of Brasil ブラジリアンクラシックミュージック』鈴木裕子訳、ブラジル連邦共和国外務省文化部。
→ブラジルのクラシック音楽をコンパクトにまとめた一冊。第一線の研究者の論考が掲載されている。書籍中で紹介された楽曲がCDに収められており資料価値が高い。

Heitor, Luiz. 2016. 150 anos de música no Brasil (1800-1950) 2a edição. Biblioteca Nacional. 

Pinto, Alexandre Gonçalves. 1936. O choro: reminiscências dos chorôes antigos. (アレシャンドレ・ゴンサルヴェス・ピント『ショーロはこうして誕生した: 忘れられたリオのショローンたち』貝塚正美訳、彩流社、2015年。)
→ヴィラ=ロボスと同時代を生きた著者による、ショーロおよびショーロ奏者列伝。訳者の貝塚氏のウェブサイト(https://fonfon.jp/)は、日本語で「ショーロ」を紹介したウェブサイトとして最も充実したサイトの一つであろう。拙著執筆においても大いに参照させて頂いた。この場を借りて御礼申し上げたい。

ウィリー・ヲゥーパー(2015)『1冊でわかるポケット教養シリーズ リアル・ブラジル音楽』ヤマハミュージックメディア。
→ブラジル音楽入門としてはこの一冊をおすすめしたい。著者は他にもブラジル音楽の紹介本を執筆しており、いずれも充実した内容である。

Appleby, David P. 2014. The Music of Brazil. University of Texas Press. 

Gianesella, Eduardo Flores. 2012. Percussão orquestral brasileira: problemas editoriais e interpretativos. Editora Unesp.

Volpe, Marie Alice. 2001. Indianismo and Landscape in the Brazilian Age of Progress: Art Music from Carlos Gomes to Villa-Lobos, 1870s–1930s. The University of Texas at Austin.


<ヴィラ=ロボスの伝記および総論にあたる書籍・文献>

上記については、2022年現在で100冊を超える書籍が生み出されている。ここでは、その中でも特に重要であり、『ヴィラ=ロボス ブラジルの大地に歌わせるために』第一章執筆時に参考としたものを列挙する。

Appleby, David P. 1988. Heitor Villa-Lobos: A Bio-Bibliography. Greenwood Press.

Appleby, David P. 2002. Heitor Villa-Lobos: A Life (1887~1959). The Scarecrow Press.
→Applebyの著作は、ヴィラ=ロボス研究において欠かせない先行研究である。英語で書かれたこの二冊は極めて読みやすく、参考にしやすい。拙著執筆過程で本書のほとんどの翻訳を完了させた。

Averbach, Ricardo. 2022. Villa-Lobos and Modernism: The Apotheosis of Cannibal Music. Lexington Books.
→拙著執筆時点では最新のヴィラ=ロボス研究書。

Beaufils, Marcel. 1988. Villa-Lobos: Musicien et poète du Brésil.  Éditions de l’IHEAL

Behague, Gerard. The Beginnings of Musical Nationalism in Brazil. Information Coordinators, Inc.,1971.

Duarte, Roberto. 2019. Villa-Lobos errou?: Subsídios para uma revisão musicológica em Villa-Lobos. Algol Editora. 

Flechét, AnaÏs. 2004. VILLA-LOBOS À PARIS: Un écho musical du Brésil. L’Harmattan.
→パリ時代のヴィラ=ロボスに焦点を当てた一冊。フランス語。木許翻訳中。

Fléchet, Anaïs. 2010. Le Folklore C’est Moi ! (Programme du Théâtre du Châtelet.)

Grieco, Donatello. 2010.  Roteiro de Villa-Lobos. Fundação Alexandre de Gusmão.
→年代でヴィラ=ロボスの生涯と作品を整理した総論。sua obraと対照させて読んでいくとわかりやすい。

Guérios, Paulo Renato. 2003. Heitor Villa-Lobos: o caminho sinuoso da predestinação. Editora FGV.

Guérios, Paulo Renato. 2006. Heitor Villa-Lobos and the Parisian Art Scene: How to Become a Brazilian Musician. Mana vol.1

Kiefer, Bruno. 1981. Villa-Lobos e o Modernismo na música brasileira. Movimento.

Peppercorn, Lisa Margaret. 1991. Villa-Lobos The Music: An analysis of his style. Translated by Stefan de Haan. Kahn & Averill. 

Peppercorn, Lisa Margaret.1980.  “A Villa-Lobos Autograph Letter at the Bibliothèque Nationale (Paris)”, In Latin American Music Review / Revista de Música Latinoamericana, Vol. 1, No. 2,  pp. 253–64.

Schic, Anna Stella. 1987. Villa Lobos: souvenirs de l’Indien blanc. Arles: Actes Sud.(アンナ・ステラ・シック『白いインディオの想い出――ヴィラ゠ロボスの生涯と作品』鈴木裕子訳、トランスビュー、2004年。)
→日本語で読むことのできるヴィラ=ロボスについての書籍として極めて貴重。鈴木氏の翻訳のおかげで、2000年代初頭に私たちはこの作曲家の全体像を知ることができた。

Tarasti, Eero. 2021. HEITOR VILLA-LOBOS vida e obra (1887-1959). Tradição Paulo de Tarso Salles, Rodrigo Felicíssimo, Claudia Sarmiento. EDITORA CONTRACORRENTE.
→原著は英語によるHeitor Villa-Lobos: The Life and Works, 1887-1959 McFarland, 1995だが、近年ポルトガル語に翻訳された版を参照した。ヴィラ=ロボスの生涯と作品全体を扱っており、拙著執筆時に理想としたものである。

Mariz, Vasco. 1970. Heitor Villa-Lobos: Life and Work of the Brazilian Composer. 2nd rev.ed. Brazilian American Cultural Institute.
→ヴァスコ・マリスのヴィラ=ロボス評伝は、ヴィラ=ロボス自身の脚色が入っていて事実と異なるところもある。しかし、この作曲家に深く関わった著者ならではの評伝として極めて貴重である。著者は2011年の論考集に至るまでヴィラ=ロボスおよびヴィラ=ロボス研究の動向を追い続けており、いずれも必読。

Mariz, Vasco. 1977. Heitor Villa-Lobos: Compositor Brasileiro Em comemoração ao 90.゜aniversário do nascimento de Villa-Lobos 5.a edição.  Museu Villa-Lobos.

Mariz, Vasco(org.). 2011. Vida musical : IV  “Em homenagem aos 52 de morte de Villa-Lobos e aos 90 anos do autor. Academia Brasileira de Música.

Langlois,Frank et Hugon, Gérald. 2007. Heitor Villa-Lobos 1887-1959. Éditions Max Eschig.

Wright, Simon. 1992. Villa-Lobos.  Oxford University Press.


<ヴィラ=ロボスの生涯及び作品に関する重要文献>

・膨大な数にのぼるため、詳しくは『ヴィラ=ロボス ブラジルの大地に歌わせるために』(春秋社)巻末の参考文献リストを参照いただきたい。ここでは、そのうちの最重要論文や書籍のみを抜粋して掲載する。

Bulcão, Clóvis. 2015. Os Guinle: A história de uma dinastia. Editora Intrínseca.
→ヴィラ=ロボスの最大パトロンであったギンレ家についての伝記。ヴィラ=ロボスの話も頻出する。

Dudeque, Norton. 2021. Heitor Villa-Lobos’s Bachianas Brasileiras: Intertextuality and Stylization. Routledge.
→ O Sertão Imaginado nas Bachianas Brasileiras de Heitor Villa-Lobos.と並び、「ブラジル風バッハ」について近年出版された最も詳細かつ内容の深い研究。こちらは構造の分析に重点が置かれている。

Estrella, Arnaldo. 1987. Os quartetos de cordas de Villa-Lobos. (1.a edição, Rio de Janeiro, 1969) 2.a ed. Rio de Janeiro: MEC. Museu Villa- Lobos.
→著者はヴィラ=ロボスと交流のあったピアニスト。本書は弦楽四重奏の研究の嚆矢。

Forsee, Aylesa. 1969.  Artur Rubinstein, King of the Keyboard. Thomas Y. Crowell Co.(アリーサ・フォーシー『ルービンスタイン物語―鍵盤の王者』横山一雄訳、音楽之友社、1971年。)
→ルービンシュタインとヴィラ=ロボスの関係は極めて重要。

Nóbrega, Adhemar Alves da. 1975. Os Choros de Villa-Lobos. Rio de Janeiro: MEC. Museu Villa-Lobos.
→ショーロス研究の嚆矢として重要。

Medeiros, Ana Judite de Oliveira. 2021. O Sertão Imaginado nas Bachianas Brasileiras de Heitor Villa-Lobos. Appris Editora.
→「ブラジル風バッハ」シリーズについての最新の研究書。このシリーズの中にどのように「ブラジル」的なものを入れ込んだのか、かつ「奥地」の素材をどのように盛り込んだのかなど、このシリーズ全体を考えるうえで重要な研究。

Lago, Manoel Aranha Corrêa do. 2010. O Círculo Veloso-Guerra e Darius Milhaud no Brasil: Modernismo musical no Rio de Janeiro antes da Semana. RELER.
→日本ではあまり知られてこなかったヴェローゾ・ゲーハ・サークルについての研究書。ヴィラ=ロボスとヴェローゾ・ゲーハ・サークルの関係はこの作曲家および当時のブラジルの音楽状況を考えるうえで重要。

Sachs, Harvey.1995. Rubinstein: A Life. Grove Press.
→ルービンシュタインとヴィラ=ロボスの関係は極めて重要。

Santos,Turibio (1975) Heitor Villa-Lobos e o violão, Museu Villa-Lobos.(Heitor Villa-Lobos and The Guitar, translated by Victoria Forde and Graham Wade, Wise Owl Music.1985)
→ギタリストにして元ヴィラ=ロボス博物館館長のトゥリビオ・サントスによるヴィラ=ロボスのギター作品の分析。セゴビアとの出会いについても詳しく記述されており、このジャンルにおいては必読といえる。

Salles, Paulo de Tarso. 2018. Os Quartetos de Cordas de Villa-Lobos: Forma e Função. Editora da Universidade de São Paulo.
→弦楽四重奏曲全体の研究および分析として現時点で最も詳しいものである。

Toni, Flávia Camargoe  e Fresca, Camila,  “TRÊS FESTAS DE ARTE” OU A SEMANA QUE SACUDIU SÃO PAULO  (Toda Semana: Música e Literatura na Semana de Arte Moderna CDブックレットに所収)
→「近代芸術週間」のもっともコンパクトかつ充実した解説。

Rubinstein, Arthur. 1980.  My Many Years. Alfred A. Knopf .(アルトゥール・ルービンシュタイン『 ルービンシュタイン自伝―神に愛されたピアニスト(下) 』木村博江訳、共同通信社、1984年。)
→ルービンシュタインとヴィラ=ロボスの関係は極めて重要。特にこの伝記にはヴィラ=ロボスのことが頻出する。