ヴィラ=ロボスの作品

1000曲におよぶ作品の概略

ヴィラ=ロボスの残した1000以上あるいは2000曲近くあるのではと言われる作品も、現在演奏される機会のあるものはごく限られたものだけになっている。演奏されなくなった名曲もあるに違いないと思ってみても、出版されていたものがいつのまにか絶版になったり、出版社が潰れていたり、書かれたときに一回演奏されただけのものや紛失したもの、いまだ行方の分からないものなども数多くあって、リオデジャネイロのヴィラ=ロボス記念館の資料保存作業は年々苦労の多いものになっている。

「自分がヴィラ=ロボスになることが分かっていたら、もっと楽譜を大切に保管していただろう。」とヴィラ=ロボスは冗談を飛ばしていたようだ。彼は次の創作のことに忙しく、済んだことに余り執着しない性格だったのだろう。他人に渡ってしまった楽譜、最初の妻が保管していたもののの中で分からないものも多く、アルミンダ夫人の献身的な努力がなかったら、もっと多くの貴重な楽譜が紛失していたに違いない。ここでは1989年にリオデジャネイロのヴィラ=ロボス記念館が編纂した作品総目録に従って、彼の作品群の概略を示す。

 


 

≪ブラジル風バッハ≫ 

1930年から45年にかけて書かれた9曲の連作。≪第1番≫(チェロオーケストラのため)と、≪第5番≫(8台のチェロとソプラノのため)が最も有名。
≪第4番≫(ピアノまたはオーケストラ)、次いで≪第6番≫(フルートとファゴット)、≪第9番≫(弦楽合奏または合唱)、≪第2番≫(小オーケストラ)もよく演奏される。この他≪第3番≫(ピアノとオーケストラ)、≪第7番≫、≪第8番≫(フルオーケストラ)がある。
いずれもバッハの組曲を連想させる形で書かれているが、“BACHIANAS BRASILEIRAS”を訳せば“バッハ風のブラジル音楽”ということになる。この一連の作品を理解するのには、この訳が一番ぴったりである。ブラジル風バッハ各曲の解説についてはこちら。


 

≪ショーロス≫

パリ滞在中の1920年から29年にかけて書かれた作品で、16曲の連作である。≪第1番≫(ギター)、≪第2番≫(フルート、クラリネット)、≪第3番≫“きつつき”(クラリネット、A.サクソフォーン、ファゴット、ホルン3、トロンボーン)、≪第4番≫(ホルン3、トロンボーン)、≪第5番≫“ブラジルの魂”(ピアノ)、≪第6番≫(オーケストラ)、≪第7番≫(管、弦7重奏)、≪第8番≫(オーケストラと2ピアノ)、≪第9番≫(オーケストラ)、≪第10番≫(オーケストラと合唱)、≪第11番≫(ピアノとオーケストラ)、≪第12番≫(オーケストラ)、≪第13番≫(2群のオーケストラと吹奏楽)、≪第14番≫(オーケストラ、吹奏楽、合唱)、≪ショーロス・ビス(Chôros bis)≫(ヴァイオリン、チェロ)、≪ショーロスへの序章≫(オーケストラとギター)。
この中では第1、2、3、5、8、10番がよく演奏される。ブラジル独特の民族的な音楽であるショーロの形と心を形にしたもので、ブラジルへの思いが込められた最もヴィラ=ロボス的な代表作である。ショーロス各曲の解説についてはこちら。


 

交響曲と交響管弦楽曲

交響曲は12曲書いている。交響管弦楽曲は30曲あって、かなり充実した作品が多い。
≪シンフォニエッタ 第1番、第2番≫。 組曲≪ブラジル発見 第1~4番(合唱付き)≫。 ≪アマゾンの密林(映画『緑の館』の音楽)≫。バレエ曲≪ウィラプル≫。バレエ曲≪ルダー“愛の河”≫。バレエ曲≪皇帝ジョーンズ≫。交響詩≪一民族のオデュッセア≫。序曲≪ウィリアム・テル≫。≪アフリカ舞曲≫。≪マンドゥー・サララー(世俗カンタータ)≫等がある。
この中でも≪シンフォニエッタ第1、2番≫や、組曲≪ブラジル発見≫、バレエ曲≪ウィラプル≫と≪ルダー≫、≪アフリカ舞曲≫などはよく演奏される曲で、ブラジル的色彩の強い内容の作品ばかりである。また、バッハの前奏曲やフーガをオーケストラに編曲したものもある。交響詩・バレエ曲の解説についてはこちら。


 

協奏曲

協奏曲は18曲あり、演奏される機会に恵まれている作品が多い。
≪ピアノ協奏曲第1~5番≫。≪チェロ協奏曲第1、2番≫。≪ハープ協奏曲≫。≪ギター協奏曲≫。≪7つの音のシランダス(ファゴットとオーケストラ)≫。 ≪幻想曲(サクソフォーン、2ホルンと弦楽オーケストラ)≫。≪ハーモニカ協奏曲≫などがよく知られている。


 

室内楽

室内楽にはまとまりのある名曲が多い。
約40曲の作品の中で注目されるのは、17曲の≪弦楽四重奏曲≫が書かれていることである。その他、≪ヴァイオリンソナタ第1~4番≫。≪チェロソナタ第1~2番≫。≪ピアノトリオ第1~2番≫。≪四重奏曲(フルート、A.サクソフォーン、チェレスタ、ハープ、女声合唱付き)≫。≪ショーロス形式による五重奏曲(管楽)≫。≪器楽五重奏曲(フルート、ハープ、弦楽三重奏)≫。≪神秘的六重奏曲(フルート、オーボエ、A.サクソフォーン、ハープ、チェレスタ、ギター)≫。≪九重奏曲“ノネート”(フルート、オーボエ、クラリネット、A.サクソフォーン、ファゴット、チェレスタ、ハープ、ピアノ、各種打楽器と混声合唱)≫等は演奏されることの多い作品である。


 

独奏曲

独奏曲の代表的なものと言えば、なんといってものべ100曲以上もあるピアノ曲に焦点が向けられる。ヴィラ=ロボスの全作品の中では、内容的にも深く個性的で最も充実した作品が多く書かれているのはこのピアノ曲の分野である。
ギターのための作品にも充実した作品が多く、≪12の練習曲集≫、≪5つの前奏曲≫、≪ブラジル民謡組曲≫などは、いまやギター奏者にとっては古典的存在である。この他、≪エレジー≫、≪黒鳥の歌≫、≪カプリッチョ≫ ←(以上、ヴァイオリンまたはチェロ)。≪小組曲≫、≪さすらい≫ ←(以上、チェロ)などはよく知られている小品である。


 

合唱曲

世俗的なもの、宗教的なものを合わせると、300曲位の曲が書かれている。彼が合唱運動に力を入れていた時代の所産だと思われるが、日本でも演奏されることのあるものなどをあげると、≪聖セバスチャンのミサ曲≫、≪めでたき叡智“ベンジッタ・サベドリア”≫。≪マニフィカト・アレルヤ≫がある。


 

独唱曲

独唱曲は細かく数えあげると約200くらいの曲がある。
歌詞がポルトガル語なので、歌う側にとっては簡単にとっつけないが、歌い込むとその魅力にとりつかれると言われている。
≪純ブラジル風歌曲集≫。≪セレスタス“ブラジルのセレナーデ”≫。≪モジーニャとカンソン第1、2集≫。≪歌とヴァイオリンの組曲≫など、ユニークな歌が多い。


 

歌劇 

5つの作品があるが、最近では上演されることがない。