ヴィラ=ロボスの「交響曲全集」に引き続きご指名を頂き、本CDのライナーノーツを弊協会会長の木許が執筆しています。
以下、木許よりメッセージです。
本ライナーノーツでは、クラウジオ・サントロの交響曲についてはもちろん、サントロがどういう人であったかを綴りました。日本でサントロはあまり知られていないこともあり、日本語でこの作曲家について読むことができるものは極めて限られています。今回はポルトガル語文献とフランス語文献を辿り、「20世紀の横断者」たるサントロの姿を描き出そうと試みました。サントロという作曲家がどのように作風を変遷させていったのか。12音音楽から民族主義音楽へ、そして電子音響音楽へと移っていく過程には何があったのか。サントロはナディア・ブーランジェにレッスンを受けているのですが、そのときに何をやっていたかというと、バルトークの「ミクロコスモス」に取り組んでいたんですね。もうこれだけでも面白いのに、ブーランジェがストラヴィンスキーに「サントロは凄いわよ」と送った手紙も見つかりました。
また、交響曲第5番にはブラジル民族主義運動の父アンドラージが収集したCanto de Xangôの旋律そのもの(Xangôとは、ブラジルの憑依型宗教「カンドンブレ」における稲妻の神)が使われていることを指摘し、第7番「ブラジリア」がブラジルの首都ブラジリアの構造を想起させる要素を持っていることに言及しました。
個人的には、以下のようにかなり大胆な文章を生み出すことができたことに満足しています。「サントロ自身はこの交響曲第5番に特に副題をつけていないが、その独自性と全楽章の有機的統一感ゆえに、Xangô(シャンゴー/稲妻の神)の副題をもって呼びたくなるような傑作である。」
気合いを入れて8000字近く書いてしまった結果、12ページのブックレットにして頂きました。日本でこんな話が紹介されるのはこれが初だと思いますし、そもそもサントロの交響曲がぶっ飛んでいるので(対位法が鬼のよう!)ぜひお楽しみください。